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L-INSIGHTについて

ごあいさつ

Message from the President

京都大学総長
湊 長博

世界の社会や産業構造などが大きく変化しつつある現在、科学技術と学術的知見に対する社会的要請は益々高まっており、研究者の社会的役割は拡大しています。我が国が科学技術立国として持続的な発展を続けていくためには、科学技術・イノベーションの推進は不可欠であり、とりわけ少子高齢化が急速に進行している我が国では、その将来の担い手である卓越した研究者を継続的に育成・輩出していくことが、研究大学の極めて重要な課題になっていると思います。

このような背景の下、令和元年度から文部科学省によって、世界トップクラスの研究者として活躍できる人材の育成に向けたプログラムの開発や組織的な研究者育成システムの構築を通じて、大学における優れた研究者の戦略的な育成推進を支援するため「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」が開始され、本学では「世界視力を備えた次世代トップ研究者育成プログラム(L-INSIGHT)」により、国内外の教育・研究機関、企業等の各連携機関と協力の下、若手研究者の人材育成プログラムを精力的に実施しています。

大学における若手教員・研究者の減少傾向は、我が国の大学における将来の研究力の維持と強化において、極めて懸念すべき問題であることは、かねてより国でも指摘されているところです。京都大学でもこれを深刻に受け止め、若手教員重点配置などの施策を進めてきています。加えて特に重要なのは、大学における若手教員や研究者の研究環境をいかに充実させていくかという観点です。これには、物理的研究環境整備のみならず、独立した研究者として世界に立ち向かうPrincipal Investigator(PI)としての素養を積むための環境作りと支援も極めて重要になるでしょう。特に、国籍や学術分野等の枠を超えて多様なバックグラウンドを持つ研究者との交流は、新たな発見やモチベーションへとつながり、その後の研究の幅を拡げる貴重な機会になると思います。

京都大学では本事業を通じて、文部科学省やその他の関係機関と連携しつつ、我が国の研究者育成プログラムの開発・普及に貢献し、次代を担う優秀な若手研究者の育成に資するため最大限の努力をしていく所存です。


Message from the Executive Vice-President

京都大学理事・副学長
北川 進

近年、若手研究者の置かれている状況・環境は大変厳しく、基盤的経費の減少、雇用の不安定化、研究以外の業務の増加等により、大学独自の若手研究者育成事業による研究環境の形成をもってしても、その育成環境は十分とは言い難い現状にあります。

そのような中、京都大学では文部科学省の科学技術人材育成費補助事業「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」採択の「世界視力を備えた次世代トップ研究者育成プログラム(L-INSIGHT)」を通じ、研究者各々の個性を活かし、科学と学術の力で未来の国際社会を担う人材を育成しようという取り組みを推進しております。我が国における次世代の研究者、真のリーダーを育成するためには、若手研究者が、自らの進む道を志高く見据え、自ら実行することを、大学全体で積極的に推奨できる環境づくりが不可欠です。

本事業の「世界視力」とは、研究者が、ひとりの研究者としての目線だけでなく、地域社会はたまた国際社会など、多様な立場からの目線による物の見方を自在に操り、学術分野や文化圏を超える広い視野を有していることをいいます。国内外の優れた若手研究者が、本事業から刺激を得て、communicationとcollaborationを通じて幅広い人的ネットワークを構築し、challengingな課題に挑むことが、彼らの人間力を鍛え、各々の専門分野において長く活躍する基礎となるものと確信しております。 今後とも文部科学省をはじめ、関連機関の皆さま方のご支援、ご協力をいただきながら、本事業が我が国の若手研究者育成に資することを祈念いたしております。


Message from the Director

学術研究展開センター長/若手研究者戦略育成拠点長
石川 冬木

優れた研究者は、独自性ある着眼点をもって仮説を育み、それに基づいて実験・観察等で得られた成果を世界に向けて公表し、世界の研究者からのコメント・批判を受けて仮説の推敲・強靱化を図る一連の作業をすることができます。それは、彫刻をひとつの角度だけから見ている個人レベルでの思惟を、異なる学術経験・文化・思考方法をもつさまざまな研究者の助けを得ながら、彫刻を異なる多くの角度から見ることで完全なものに近づけようと推敲する作業であると言えるでしょう。そのためには、研究者は自分を多くの研究者の前に露出させ、建設的な議論を導き、自分の仮説を修正する気構えと技術をもつことが重要です。

我が国では、いかに優秀であっても言語・地理上の障害に加えて、ひとまえでの積極的な発言をためらうという悪弊のために、議論で自分を鍛えることを苦手とする研究者が多いことも事実です。「世界視力を備えた 次世代トップ研究者育成プログラム」(L-INSIGHT)は、世界で活躍したい願う若手〜中堅研究者をフェローとして採用し、研究の進め方・論理の導き方・ライフスタイルにおけるwork-time balanceなどについて世界で活躍する研究者がどのように実践しているのか、その多様性を学び、学んだ成果を自身の研究活動に生かすためには能動的にどのようにすべきか、という自問を通して実践的な成果を得ることを目的としています。本プログラムにより、より多くの「世界で活躍できる研究者」が産まれることを期待しています。